蝶の夢―Desire―



いっそ、夢でもいい。
自分の都合のいいように、



大きな木は、大粒の涙を流す空から二人を守る。
その雨は何重にもかかったカーテンのように、景色を、視界を、遮断していた。
地面を叩きつける音は、二人を、一切の現し世から隔離するように、ただ同じリズムで奏でゆく。

最早、二人にはその旋律さえも聞こえてはいないのだけれど・・・。


セナが右手を胸の上に置いたままジッと蛭魔を見つめ、また、蛭魔もただセナを見つめていた。
蝶は、目の前の男の答えを聞くために。
蜘蛛は、セナの先ほどの台詞に驚愕して。

(い、言っちゃった・・・!!)
言ってしまった。もう取り消せない言葉を。彼に拒絶されれば、二度と会えないことも手に入らないことも分かっていたけれど、不思議と後悔の念は湧いてこなかった。もしかしたら、自分はただこの感情の意味を知りたかっただけなのかもしれない。
否、それはない。だって、失うのが怖いと思ってしまっている。彼が何者で、どんな人であるのか、僕は知らないのに。嗚呼、きっと、あの瞳に囚われているのだ。そして、彼は僕を離さないのだ。
何故か、そんな確信があった。

まるで、永遠かとも思えたその時間を遮ったのは、蛭魔だった。
「チッ・・・」
フイッと顔を背け、セナには聞こえないほどの小さな舌打ち。そうでもしなければ、やっていられない。さっきからセナの台詞が頭にリフレインしているのだから。けれど、心の奥からじわりじわりと這い寄る感情。それは、きっと歓喜に似た激しくも深い独占欲。もう引き返せない。もう『諦める』だなんて可愛らしい感情は、戻ってこない。

「糞チビ。」
「・・・はい」
蛭魔は下を向いてしまったセナの顎に手をかけ、上を向かせる。
再び絡み合う視線。
顔は今にも触れそうな距離で。
「テメェ・・・意味分かって言ってるか?」
あぁ、この瞳だ。この紅い鋭い瞳に囚われているのだ。
セナの背筋にゾクリと震えが走る。
「・・・わかっている、つもりです・・・。でも、よければ・・・」
緊張で固まっていた顔を、ゆっくりと綻ばす。
その微笑みが、蛭魔を捕らえて離さない。
「教えてください」


「んッ・・・!!」
蛭魔はセナに噛み付くように口付け。
強く弱く唇を吸い、時折舌先でその輪郭を舐め取る。
「んんッ!」
空気を求め開かれた唇に、舌を差込み、歯列をなぞり、引き抜いて唇を甘噛み。
「セナ・・・」
啄ばむ様に小さなキスを繰り返し、キスの合間に蛭魔は熱に浮かれたようにその名前を囁く。
セナは蛭魔にしがみついたまま、ただされるがままに口腔を犯される。
感じたようにピクリと痙攣するセナの変化を見逃さず、蛭魔は舌を深く差し入れた。
舌を絡めて、きつく吸い上げて。
「ふ・・・ぁッ・・・」
セナの頭に霞がかっていく。ボーッと、ただ与えられる感じたことの無い快楽を貪る。
吸われた舌がビリビリと痺れ、感覚がなくなっていく。
混ざり合う唾液を飲み込んでいいのか、逡巡していると、口の端から溢れていってしまった。
きつく瞑った目を恐る恐る開くと、あの紅い瞳と目が合った。
目を合わせたまま、角度を変えながら深いキスを繰り返す。

「んん〜っ!」
不意に、きつく握り締められていたセナの掌が、ドンドンと蛭魔の胸を叩く。
慌てて唇を離すと、もうどちらの物か分からなくなった唾液が糸を引いた。
真っ赤になった顔でそれを見止めながら、セナは荒く息を繰り返す。
「鼻で息すんだよ」
チュッとセナの濡れた唇に軽くキスを落とすと、蛭魔は意地悪く笑う。


「答え、わかったか?」
「・・・ッ!」
嗚呼、どんどん深みに嵌る。
貴方のその瞳に。
口元は笑っていても、その瞳が真剣で。
こんな気持ち、きっと貴方だから抱くんだと思います。
「わかり・・・ません・・・」
もっと、貴方を知りたい。
もっと、もっと。
全部。
「言ったな?」
「言っちゃいました」
「後悔すんなよ、セナ・・・」






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ようやく両思いになれました!多分(多分て・・・
しかも、セナさん、誘い受け・・・ゲフンゲフン
蛭魔さん、振り回されまくり・・・。

キスシーンって難しいんだぁ・・・。
音を入れるとエロくなるので、削りましたが・・・だ、大丈夫かしらん・・・(滝汗
次は、裏か・・・も・・・?(汗

【2006.01.08】